初値は3倍以上に!はてなの新規上場で買いが殺到する理由

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はてなの新規上場について、当のはてなブックマークを使っているユーザーやtwitterなどでの反応を見ていると、「なんで(今後急成長すると思えない)はてなの株に買いが殺到しているの?」と不思議に思っている人が多くいました。IPO投資を主戦場とする個人投資家(兼業)の私から見ると、決して不思議ではないのですが、その理由を説明していきたいと思います。

ざっくり説明すると下記2点なんですが、あとで詳しく書いていきますね。これだけでわかっちゃった人は賢い!このページをそっと閉じてください。

  • 理由1:上場する際の最初の価格は買いやすい金額に設定されている
  • 理由2:初値を決める最大の要因は急成長への期待ではなく需給

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買いが殺到ってどんな状況?

普段、株式投資をやらない方にとって「買いが殺到」という状況は、何だか字面だけ凄いんだけど、実際どんな状況だかよくわからないなーと思っている方も多いかもしれません。よくわからない状況というのが、「買いが殺到」という事態を不思議に思う要因の一つかもしれませんね。わからないものは身近なものに置きかえてみましょうか。

株式市場というのは「市場」とついていますので、売買を行う場になります。魚市場とかと一緒です。魚市場の競りを想像してみてください。サバ500円で買うよーって仲買人Aさんが言ったとします。仲買人Bさんもサバが欲しいので、いやこっちは510円で買う!となります。という訳で、欲しい人が多ければ多いほど値段が吊り上っていくという流れが発生することに。

では、魚市場を株式市場に置きかえてみましょう。魚市場ではサバが欲しい人がいっぱいいて値段が高騰していきましたが、今株式市場で起きているのは「はてなの株が欲しい」人がいっぱいいて買いが殺到している、ということです。少しはイメージがわいたでしょうか?そんなん知っとるわ!という方も多いかもしれませんね。

理由1:上場する際の最初の価格は買いやすい金額に設定されている

魚市場でウォーミングアップしていただいたところで、理由1から説明していきたいと思います。

また、ちょっと魚市場に登場してもらおうかなと。会社が新規上場するということは、投資家にとっては今まで売買したことのない魚が市場に出てくるのと同じ状況を意味します。これは非常に買うのが怖い訳です。なんせ情報が少ないですからね。見た目からでは味もわかりませんし、自分で食べたことのない魚を買うのって勇気がいりませんか?私なら怖いと思います。

という理由から、投資家が買いやすいように、新規上場する際の最初の価格(公開価格・公募値・売出価格などと言います)は、割安に設定されていることが多いんですよ。ちなみに今回のはてなの公開価格は800円に設定されていました。

株価の割安さを見る指標として、PER(株価収益率)という指標が代表的なものなんですが、会社四季報の記事で取り上げられている比較銘柄のPERと比較してみましょう。

はてな(3930) 19.28(*1)
アイティメディア(2148) 35.87(*2)
カヤック(3904) 31.08(*3)

*1 はてなは公開価格800円、会社四季報の予想する1株益41.5で計算
*2 会社四季報HPの2016/2/25前場終値ベースの数字
*3 会社四季報HPの2016/2/25前場終値ベースの数字

はてな(3930)の公開価格が、同じような業態の銘柄と比較して割安に設定されていることが何となくわかっていただけたかと思います。ま、はてなと全く同じ業態はいないと思うので、完全に比較するのは無理ですよ。あくまで参考値ということで。

理由2:初値を決める最大の要因は急成長への期待ではなく需給

さて、引き続き理由2を説明していきますね。恐らく最大の認識のギャップは理由2から生じているんじゃないかと想像していますが、初値を決める最大の要因は急成長の期待ではありません。

株式投資を普段やらない方は、株価を決める大きな要因として、「急成長への期待」があると思っている方もいらっしゃるかもしれません。長い目で見ればそれは間違いではありませんが、初値の形成において、急成長への期待は一要素にしか過ぎません。もっと重要な要素があります。それは需要(買い)と供給(売り)です。

初値の需給は普段とはちょっと違う

初値が決まる際の需要(買い)と供給(売り)というのは普段とはちょっと変わっていまして、何が違うかというと、一番の違いは異常な量の需要(買い)が発生しやすいということです。

投資家の間では、IPO後の数日間は株価が乱高下しやすいことがよく知られています。なぜかといいますと、株価の乱高下は短期の投資家にとっては儲けのタネですので、短期の資金が集まりやすいからという理由。「パチンコの新台に並ぶ」なんて言われ方をよくしますね。

東洋経済ONLINEのIPO記事で、ある市場関係者の話として「そのときの流動性にもよるが、株価に関係なく初値で買いに来る資金は、つねに5億~10億円程度存在する」という話が出てきます。ここ数年IPO投資を続けた私が受けた印象も同じようなもので、5億~10億円という規模感はしっくりきます。

参照新規株「上場初値からの騰落率」ランキング | 週刊東洋経済(マーケット) | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

留意したいのは、初値騰落率の高い企業=有望企業ではないという点。騰落率を左右するのは、あくまで上場時の需給でしかない。ある市場関係者によれば「そのときの流動性にもよるが、株価に関係なく初値で買いに来る資金は、つねに5億~10億円程度存在する」という。結果、公募・売り出し規模が小さいほど、高倍率になりやすいのだ。

今回のはてなのケースでは、上場初日、株式市場があく寸前の買い気配(買いたいと希望する数値)は、買気配値が2,500円、買気配株数が246,100株程度でした。単純に計算すると、上場寸前では6.1億円の買い需要があったということになります。

供給(売り)ってどんな感じ?

では、もう一方の供給(売り)をみていきましょう。

供給として考えなければいけないのは、上場承認前からの株主が持っていた株と、上場承認後から上場前までに投資家に公開され買われた株になります。ちょっとややこしいので少し補足します。上場承認前からの株主が持っていた株というのは、例えば経営陣や利害関係者等が持ってる株とかですね。近藤さんとか梅田さんとか栗栖さんが持っていた株です。で、それ以外に上場承認後から上場前までに投資家に公開され買われた株というのがあります。

知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、上場前に株買えちゃうんです、実は。幹事をつとめる証券会社が通常何社かあるんですが、この証券会社ごとに割り当てられる株数が決まってまして、優良顧客(手数料いっぱい払ってる人等)に配分したり、希望者が抽選で当選すれば買えたりするんですよ。そこで手に入れた株を初値で売る人も中にはいる訳で、これも供給(売り)サイドに回ります。

ついでに言うと、上場承認前からの株主が上場後に自由に株を売れるかというと、必ずしもそうではありません。上位株主にはロックアップというのがかかっているケースがよくあります。ロックアップとは、ある条件(期間や価格等)を満たさなければ株を売りませんよ、と約束すること。はてなでは、自己株式が6.59%あり、上位株主(計87.99%を所有)には180日間のロックアップ期間がかけられていました。

所有株式数 所有割合 ロックアップ
近藤 淳也 1,852,800株 66.33% 180日
株式会社はてな(自己株式) 184,000株 6.59%
毛利 裕二 167,000株 5.98% 180日
梅田 望夫 120,000株 4.30% 180日
栗栖 義臣 73,000株 2.61% 180日
大西 康裕 55,100株 1.97% 180日
伊藤 直也 50,000株 1.79% 180日
田中 慎樹 39,500株 1.41% 180日
田中 慎司 36,400株 1.30% 180日
小林 直樹 32,000株 1.15% 180日

なので、初値形成時の供給(売り)で考えなければいけないのは、ロックアップのかかっていない既存株主と、上場承認後から上場前までに株を手に入れた株主、ということになります。

上場時発行済株数が2,652,000株なので、ロックアップのかかっていない5.42%は約14,3700株。上場承認後から上場前までに公開された株数(公募・売出・オーバーアロットメント・その他株数の合計)は868,200株。二つを足すと1,011,900株。これが全て売りに出たと仮定して公開価格の800円で単純計算すると最大約8.0億円の供給(売り)になりますよね。ここまでの供給(売り)に関する数字は、日本取引所グループが出している新規上場会社概要(pdf)EDINETに出る有価証券届出書で上場日前に公開されていますので、事前に知ることが出来ます。

で、全員が売ることは普通ありえないので、上場寸前の6.1億円の買い需要で十分満たせそうなことは推測できます。それ以前でも「株価に関係なく初値で買いに来る資金がつねに5億~10億円程度存在する」ため、初値形成時の供給(売り)の規模が小さければ、上場後「買いが殺到」することは上場前に推測可能で、決して不思議ではない訳です。

結局、はてなは上場二日目、2016年2月25日(木)に3,025円で初値がつきました。初値形成時の出来高は596,600株。買いが買いを呼び、実に約18.0億円の買い需要が最終的には集まりました。記事を書いている最中の午後1時7分には、価格は600円以上下げてストップ安(2,325円)も目前の2,355円の最安値をつけました。最後はちょっともち直して終値は2,700円。非常に荒い値動きに。これも新規上場においてはよく見かける風景です。

いかがでしたか?不思議なIPOの世界の理解に少しでもお役に立てたでしょうか?

いずれ適正価格に収斂する

最後に、「なんで(今後急成長すると思えない)はてなの株に買いが殺到しているの?」という疑問は間違いではないだろう、というお話をして締めたいと思います。

私もはてなが今後急成長すると思っていません。そして、新規上場したての株式市場の値付けは異常だと感じます。でも、この異常事態が変わると儲けのタネが一つ減ることになるので、私としては異常事態の継続を希望しますけどね。

今後半年から1年かけ、決算発表等のイベントを経て、期待以上であれば株価は上がり、やっぱりね!だったら下がるでしょう。はてなユーザーの皆様におかれましては、今後の株価の行く末を暖かい目で見守っていただければと存じます。ウォッチャーになるだけでも楽しいと思いますよ。